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企業(事業)を買収するか否かを判断する際に、「シナジー(相乗効果)」が得られるか否かは重要な視点です。

買い手企業にとっては、少なからずシナジーが期待できるからこそ、M&Aが成立するわけですが、実際に期待通りのシナジーが実現できているのかというと、それほど簡単ではないのが実状です。
中には、シナジーどころか、「ディスシナジー」によってM&Aが失敗に終わるケースもあります。

「ディスシナジー」とは、企業価値を毀損させるシナジーのことです。例えば、M&A後にシステム統合をしようとした際、業務の内容を見直すことなく、双方の意見を言われるがまま取り入れたシステムを構築した結果、想定以上に費用が膨らんだり、システム統合までに必要以上に時間を要したり、最終的には新しく構築したシステムが上手く機能しないこともあります。
また、生産拠点の統廃合などを行う際に、移転に関わる費用や撤退に伴う原状復帰の費用を十分に見積もっておらず、想定以上に費用がかかることもあります。更に、想定以上の離職者が発生することになり、その結果、急な採用を行うための費用や、入社後の教育費などが膨らむというケースもあります。

加えて、M&A直後から買い手企業が過度に介入することによって、売り手企業の社員のモチベーションを大きく低下させることも「ディスシナジー」の一つと言えます。

買い手企業からすると、現状の問題点をすぐにでも改善することで、少しでも早く利益を上げたくなるところですが、目先の利益を追い求める結果、残業時間を大幅に削減したり、人員を減らしたりと矢継ぎ早に改革を行い、現場が混乱し、社員の反発を招くということは少なくありません。
また、買い手企業の企業文化(価値観)を無理に押し付けようとして、経営陣に対する反発心や不信感を生み、優秀な社員の退職という結果を招くこともあります。

M&A後のシナジーを実現しようとするならば、短期、中期、長期の目線に立って、施策を打つタイミングを見定めることが必要です。例えば、短期的には、双方の顧客を紹介しあうなど、M&Aのメリットを感じられる施策を優先的に講じることが大切です。他に、事務所や工場の内装を変えてみたり、作業着や制服を一新してみるのも、会社が新しい方向へ進んでいるというメッセージを社内外に示すには効果的な取り組みかもしれません。
このように、M&Aは統合後の取り組みの内容および進め方によって、成功するか否かが決まるといっても過言ではありません。

 

 

 

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