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[相談]

私は学習塾を経営しており、今年、個人事業を法人化しました(いわゆる「法人成り」)。
当塾の売上高(個人事業時代)は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響の長期化に伴って、受験生やその保護者の受験に対する不安が増大したことから、(コロナ前と比較して)飛躍的に増加しています。
このため、当塾では昨年までに(個人事業時代に)正社員を数名雇用したのですが、上記の法人成り直後に、そのうちの1名から家庭の事情により退職したいとの申し出を受けました。
短期間の勤務であったとはいえ、急激に増加した当塾の受講生への授業を精力的にこなしてくれた社員でしたので、私は会社からその社員に退職金を支給したいと考えています。

そこでお聞きしたいのですが、この場合、所得税法上の退職所得控除額の計算において、個人事業の勤続期間と会社の勤続期間とを通算して、勤続年数を計算できるのでしょうか。
なお、その社員は私の個人事業の青色事業専従者でなく、その勤続期間は個人事業時代が1年6ヶ月間、法人成り後が1ヶ月間です。
また、当社の退職金規程では、退職金の支払額の計算の基礎とする期間は、法人成り後の期間によるものと定めています。

[回答]

ご相談の場合、個人事業時代の勤続期間と法人成り後の勤続期間との通算は、認められないものと考えられます。

[解説]

1.退職金からの所得税の源泉徴収手続きの概要

所得税法上、役員や従業員に対して退職金を支払うときには、原則として、所得税(及び復興特別所得税)を源泉徴収して、徴収した月の翌月の10日までに国に納めなければならないことと定められています。

その源泉徴収税額は、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合には、退職金の支給額に一律で20.42%の税率を乗じて計算した金額となります。

一方で、上記の申告書の提出を受けている場合には、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を退職金支給額から控除したうえで、源泉徴収税額を計算することとなります。

2.退職所得控除額を計算する場合における勤続年数の計算方法

所得税法上、上記1.の退職所得控除額を計算する場合の勤続年数の計算について、退職金の受給者(退職所得者)が、その退職金の支払者の下において勤務しなかった期間に他の会社等で勤務したことがある場合において、その退職金の支払者が、その退職金の支払金額の計算基礎期間のうちに他の会社等で勤務した期間を含めて計算するとしているときは、他の会社等で勤務した期間を勤続期間に加算した期間により勤続年数を計算すると定められています。

この点について、今回のご相談のように法人成りがあった場合には、(会社の)退職給与規程等に個人事業当時からの期間を含めた勤続期間を基礎として退職金を計算する旨が定められており、それに従って計算した退職金を支払うのであれば、税務上は、個人事業当時の勤続期間を含めて勤続年数を計算することができるとされています。

反対に、退職給与規程等により、退職金の支払額の計算の基礎とする期間が、法人成りしてからの期間によるものとされている場合には、個人事業当時の勤続期間との通算は認められないこととなります。

したがって、今回のご相談には、個人事業時代の勤続期間と法人成り後の勤続期間との通算は、認められないものと考えられます。

 

 

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